「…あたし、治ったら絶対に楓摩先生に告白するんだって!!」

え……

急な話で驚いた。

いや、本当は、知っていた。

愛依ちゃんが、楓摩が好きな事を知った時から、いつかはこうなる事はわかっていた。

だけど、どうしよう……

私…………

「愛依ちゃん………」

「ん?どうしたの?」

「わ、私っ…………」

「?」

「……いや、なんでもない。…ちょっと、具合悪いから、私、寝るね。ごめん。」

咄嗟に嘘をついてしまった。

「え?大丈夫?じゃあ、あたし、帰るね。お大事にね!!」

「うん……ごめんね…………」

そう言って愛依ちゃんは、病室を出ていった。

「はあ………………」

「どうしたの?朱鳥。」

「えっ、楓摩!?」

「なんだよ、そんなに驚いた?」

「う、うん……」

愛依ちゃんが出ていった時にすれ違いで入って来たのか…

「んで、どうしたの?溜息なんかついて」

「…いや、なんでもないよ………………」

私は、また嘘をついてしまった。

愛依ちゃんの事、楓摩に相談する訳にはいかないからさ…

「なんでもなくないだろ?どうしたの?」

「……陽向先生…………呼んで…ほしい……………」

「はぁ?」

「陽向先生…と……話したい………から」

「俺じゃダメなの?」

「……うん」

楓摩、怒ってる………………

もう、どうしよ…このままだったら、愛依ちゃんとの友情も壊れちゃいそう…………

「俺には話せないのに、陽向には話せるのか?」

「………………うん」

「そんなに、俺より陽向の方がいいの?」

「違っ…………そうじゃない……けど………………」

「そうじゃないなら、なんで俺には話してくれないんだよ…」

「…………それは…」

私は、半分パニックになっていた。

楓摩を怒らせたまんまだったら、楓摩に振られちゃうかもしれない……

それに、そこで愛依ちゃんが告白したら、きっとOKされちゃう……

そんなの……

嫌だよ……

でも、でも、どうしたらいいの?

わからないよ……

「わかった。朱鳥は、もう、俺より陽向の方がいいんでしょ?」

「だから……違うっ!!」

「違わないだろ!?なんで、陽向なんだよ?俺じゃダメなのかよ?そんなに、陽向が好きかよ!?なんで、俺じゃ…」

「違うって言ってるでしょ!?」

私は、気付いたら、大声を出して怒鳴っていた。

ポロポロと涙も出ている。

呼吸も、荒くなっていて、もう、わけわからない。

「……………ごめん。大丈夫?ゆっくり、深呼吸してみて…」

楓摩は、ハッと、我に返ったように、さっきの怒っていた状態から、いつもの、状態へと戻った。

楓摩は、私の呼吸を落ち着かせようと、背中に手を伸ばす。

だけど……

パシッ

「嫌っ!!……はぁ…はぁ…はぁ…………やだっ!!」

私は、楓摩を受け入れる事ができなかった。

「……ごめん。陽向、呼ぶね………………」

そう言うと、楓摩は悲しそうな顔で病室を出ていった。

あぁ…………私、きっと振られちゃうな……

それで、愛依ちゃんとも、きっと絶交されちゃう……

もう、無理だよ……

「うわぁぁぁぁぁん!!…なんでっ!!なんで、こんな事になっちゃったのぉ……私は、ただ、みんなと仲良くしたいだけなのにぃ!!うわぁぁぁぁぁん!!」

私は、枕に顔を埋めて泣いた。

そのまま、気付いたら、過呼吸になっていて、息もできない……

苦しいよ…………

楓摩…助けてよ……

嫌いになんか…ならないで…………

私、楓摩がいなきゃ何も出来ないよ……

家も無くなっちゃう………

そしたら、また親戚の人の家に帰らないといけないの?

怖い……

怖いよ…………

嫌だよ………………

また、暴力振られる毎日になっちゃうのかな……

それとも、その前に私、このまま息、できなくて死んじゃうのかな…………

もう……嫌だよ………………

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ちゃん、どうした……って、朱鳥ちゃん、大丈夫!?落ち着いて、ゆっくり呼吸して。」

「はぁっ、はぁっ…ひな……た…せん…………せ…ヒック……はぁっ、はぁっ……」

陽向先生は、私の姿を見て、驚いていた。

そりゃ、そうだよね。

楓摩に行くように言われて、来たら、大泣きしながら、過呼吸になってるんだもん。

「ゆっくり息をしてみて。大丈夫だから。落ち着いて。」

「グスッ……ヒック、ヒック…………はぁっ、はぁっ…」

落ち着いて呼吸をしてと言われても、体が言う事を聞いてくれない。

頭では、わかっているけど、呼吸はより荒くなっていく一方だ。

だめ…………意識…飛んじゃう……

「朱鳥ちゃん、しっかりして!!」

陽向先生は、ナースコールを押して、なにか言っている。

でも、私の意識は朦朧としていて、何を言ってるのかはわからない。

だんだんと、意識が薄くなっていく……

なんだか、周りが騒がしい…

時々、大きな声や、ガチャガチャとした音が聞こえる。

あれ、私、どうしたんだろう……

もう、わからないや……

そこで、私は意識を飛ばした。