「朱鳥、朱鳥ーおはよー」

なかなか起きない朱鳥を起こす。

「…………楓摩?」

「朱鳥、おはよ。起きた?朝の回診だから起きたばっかりだけど、熱計って?」

「……あ、そっか。病院…………」

朱鳥に体温計を渡すと、すんなり受け取ってくれたが、まだ、浮かない顔だ。

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

「37.6か、昨日よりは下がったね。じゃあ、聴診して、その後そのまま検査室行くからね。」

「え?」

「この前言ったじゃん、もう1回経過見るために内視鏡するからねって。朱鳥は、今日一番最初なんだから、グダグダできないからね。他にも検査室使いたい人いっぱいいるんだから。」

「…はーい」

朱鳥は、なんだかんだ言いながらも、指示に従ってくれて、今日はなんだか、スムーズに進みそう。

なんて思ってたら……












「やだっ!!怖いもん!!」

麻酔をする所までは、よかったんだけど……

内視鏡カメラを持った途端、首を振って嫌!っと抵抗する朱鳥。

「朱鳥、お願いだから我慢して?朱鳥がじっとしていてくれたら、5分で終わるから。ねっ?少しだけ、我慢してよ?」

「やぁ……怖いの!!」

なんかデジャヴ……

涙目で、俺の手を押し退けて抵抗してくる。

「朱鳥ちゃん、大丈夫だよ。この前も大丈夫だったでしょ?」

「この前のは覚えてないもんっ!!」

「えー……大丈夫だよ?麻酔もしたから、痛くないし、たったの5分だから我慢して?」

「やぁだぁ…………………楓摩とギューするのぉ…」

本格的にグズり始めたぞ……

朱鳥は、手を広げて抱っこを求めてくる。

しょうがなく、抱っこをして、ヨシヨシと慰める。

「大丈夫、大丈夫だから、ちょっとだけ我慢して?終わったら、いくらでもギューしてあげるから。我慢だよ?」

朱鳥をベッドに下ろして、寝っ転がらせる。

朱鳥の目元の涙を拭ってあげて、もう1度検査を行おうと挑戦する。

陽向も、痺れを切らしたみたいで、朱鳥が動かないように固定してくれている。

「朱鳥ー、じゃあ、すぐ終わるから我慢してねー」

「朱鳥ちゃん、ごめんねー」

朱鳥は、陽向に、ガッシリ固定されて、動けないみたいだ。

「朱鳥、力抜いてー」

朱鳥は、ポロポロと涙を零すばかりで、全然力を抜いてくれない。

「朱鳥ー、力抜かないと朱鳥が苦しいよ?」

「朱鳥ちゃん、リラックスしてー。フゥーって息吐いてご覧?」

陽向に言われた通りに、息を吐いた瞬間を狙ってカメラを進める。

すると、朱鳥は動いて抵抗しようとする。

「朱鳥、危ないから動いちゃだめ!」

俺もつい、怒ってしまう。

朱鳥は、さらに涙を零し泣いている。

できるだけ、早く終わらせて、カメラを抜く。

「朱鳥ちゃん、抑えちゃってごめんね……」

「………………」

これには、陽向も困り顔だ。

「嫌われちゃったかな?」

「………………」

朱鳥は、ベッドから降りて、俺の背中にギューと抱き着いている。

「朱鳥、陽向も謝ってるでしょ?お返事くらいしてあげたら?」

「………………」

「朱鳥?」

朱鳥を背中から剥がして抱っこする。

朱鳥は、真っ赤な目に涙をいっぱい貯めて口をキュッと結んでいる。

「ごめんね、陽向。今は朱鳥、無理みたい。先、戻ってていいよ。ありがと。」

「うん、そうするな。じゃあね、朱鳥ちゃん。」

陽向のあんな顔見た事ない……

朱鳥も、ずっと泣いている。

「清水先生ー、次、壮馬先生が、使いたいらしいんですけど、いいですかー?」

「あ、すみません。今、空けます。」

グズる朱鳥を抱っこして、病室に戻る。

「朱鳥、頑張ったね。偉かったよ。ごめんね、嫌だったね。でも、今日の検査で問題無かったからね。もう、大丈夫だから。」

「…………………嫌だったぁ…」

「ごめんね」

病室に着いてからも、枕に顔を埋めて泣いている。

俺は、ずっと朱鳥の頭を撫でていた。