「痛くない?大丈夫?」
「うん。気持ちいい!」

 ドライヤーの風に負けない程度に大きな声をお互いに出す。あまり声を張ることがないから、なんとなく新鮮でちょっとだけ笑いがこみ上げる。ふわっと仕上がった髪を櫛でとかすと艶々になる。自分の髪をあまり気にしたことがないため、どの仕上がりが正解なのかはわからないが、触り心地は抜群だ。

「できた!どう?」
「うわぁ、ふわふわ!プロみたいだね、レオくん。」
「ひかりちゃんが気に入ってくれてよかった。またやってもいい?」
「うん。またお願いしたいな。」

 よほど気に入ったらしいひかりは、指先でくるくると髪をいじったり、手櫛ですいたりしてその感触を楽しんでいる。いつものしっかりとした大人の表情から、少しだけあどけない女の子の表情になったみたいで、レオも嬉しくなって微笑んだ。
 ドライヤーを片付けて、レオはストンとひかりの隣に腰掛ける。そして、ひかりの手に自分の手を重ねた。

「レオくん?」
「…えっとね、さっきの話なんだけど。」
「うん。彼氏らしいこと、彼女らしいこと…の話だよね?」

 レオは無言で頷いた。

「もう一つ、やりたいことがあって。」
「うん。」
「ひかりちゃんが嫌だったら、断って大丈夫だからね。」
「うん。レオくんは私が嫌がることしないって、ちゃんとわかってるよ。」

 レオの手が、空いていたひかりのもう片方の手に包まれる。それに勇気づけられて、レオは赤い顔のままでひかりの目を見つめた。

「一緒に寝よう?」