サンタクロースは君だった

* * *

「ごめんね、ひかりちゃん。電車が混んでた。」
「ううん、全然。仕事のあとなのに平気?どこかで休んでから行く?」
「大丈夫大丈夫。行こうか、思い出の場所に。」

 ひかりの実家まではここから電車で1時間半。二人で鈍行に揺られ、着いた頃には6時を過ぎていた。駅から徒歩15分。隣にレオがいるのが不思議な風景だ。二度とこの場所でレオに会うことなどできないと思っていたのに。

「結構変わったね、この町も。」
「まぁ…そりゃ10年も経てば変わるよね。でも、公園はちゃんとあるんだよ。ほら。」

 木でできたベンチが二つ、滑り台が一つにブランコが二つしかない小さな公園。

「うわー…懐かしい。僕、ここにこうやって座ってたよね。」
「うん。それで私、具合悪いのかなって思って声を掛けたんだ。丁度帰り道で。」
「そうだね。あの頃いじめられてたんだよなぁ。髪の色が違うとかなんとか。」
「ギリギリまで涙を我慢してたレオくんを思い出しちゃったよ、今。」
「…僕も、あの時手を差し伸べてくれたひかりちゃんを思い出した。」

(ひかりちゃん、あの時、僕には君が全てに見えた。あの時の君が、僕の光の全てだった。)

(レオくん、あの時君は大泣きしたんだよね。私の腕の中で。小さくって、切なくって、私はずっと守ってあげたいなって思ってた。)

「ねぇ、ひかりちゃん。」
「うん?」
「僕が勿忘草を拾ってきたときのことを覚えてる?」
「あ…あ!覚えてるよ!あの時すっごく汚れてたよね、レオくん。それで私にこれなんて花って聞いてきて…。」
「うん。そう。ひかりちゃんがすごく得意気に教えてくれて、その後すっごい可愛い顔で笑ったんだ。だから、デビュー曲は勿忘草。」
「え…?」

 レオは小さく息を吸った。

「僕の曲は、全てひかりちゃんでできてる。」