久遠の絆

闇の中。


蘭は覚悟を決めていた。


食うか食われるか。


これが最後と分かっていた。


「出て来なよ」


『ずっといる』


すぐ横で声がした。


「そっか。そうだね。あんたは、わたし。ずっと、一緒にいたんだね」


横を見ると、黒い男が瞠目していた。


『俺が、お前だと?違う。俺は、お前の父』


「父さんを怖がる、わたしが生み出した幻影。そうでしょ?」


黒い男はむっつりと黙り込んだ。


「わたし、父さんが怖いよ。憎いよ。けど、大好きだよ」


『……』


「そう。わたし、父さんが好きだったんだよ。だって、わたしの父さんだもん。理屈じゃないんだ。どんなに酷いことされても、やっぱりわたしは父さんの子供なんだよ」


『……酷いことされたなら、死ねばいい』


蘭はふるふると首を振った。


「もう、死なない。生きるよ。死ぬのも生きるのも、簡単じゃない。簡単じゃないから、悩んだり、苦しんだりするんだ。父さんがわたしにしたことは、けっして許されないこと。人には言えないことだよ。でもわたしは、それを背負って生きていくよ。父さんの悲しみも、わたしが半分持ってあげる。だって、親子だもん。かけがえのない人だもん」


『何故、そんなふうに思うようになった?』


黒い男は信じられないと言うように、頭を小刻みに揺らしている。


「この世界に来たから。みんな、自分の命を精一杯生きてる。そんな人達といたら、自分を殺そうとしてたことが、ほんとに大変なことに思えてきたよ」


『そうか。良い人達に出会えたのだな』


「うん、そう」


『そうか。良かった』


黒い男がパーッと体の中から輝いた。


闇の中だから、余計に眩しい。


蘭は手で目を覆った。