久遠の絆

とりあえずマトが好きだと口を滑らせたのは、“友人として”なのだと思うことにして、蘭は席を立った。


薬湯の効用を疑う訳ではないが、ちっとも頭の重いのが治らない。


自室に戻って横になろうと思ったのだ。


マトとマヤは、蘭が立ち上がったことにも気付かない。


苦笑を漏らして、蘭は食堂をあとにした。


通路に出ると、白熱した声が聞こえてきた。


その部屋を覗くと、シドとグレンが何やら議論を交わしている。


(これはわたしには関係ないな)


自分の出る幕はないと、その部屋を通り過ぎる。


ほの暗い通路を少し歩けば、もう蘭の部屋だ。


その部屋の前に誰か立っている。


目を凝らすまでもない。


明かりの乏しい中でさえ、その人は黄金に輝いている。


「カイル、どうしたの?」


「蘭さま」


カイルは寄り掛かっていた壁から身を起こし、はにかんだように微笑んだ。


ぞわっと背中を悪寒が走る。


(やだ。なに?)


カイルを見て不快に思うことなどない筈なのに。


(こんなに綺麗なひとなのに……)


「蘭さまにお伺いしたいことがあって。お待ちしていたんです」


「わたしに聞きたいこと?」


「はい」


(何だろ。早く済ませて帰って欲しい)


カイルは少し言い淀んだものの、意を決したのか、蘭を真っ直ぐに見た。


薄緑色の瞳が微妙に揺れている。


「昨日のことですが」


「うん」


「その……私に何か言い掛けて、ニアスが部屋に入って来たことで、お止めになったことがありましたね。ちょっと気になって。もし宜しければ、もう一度あの続きを……」


「わたし、何か言ったっけ?」


「……はい」


「何言ったかなあ。思い出せないよ。そもそもカイルの部屋に行った?わたし」


カイルは言葉を失った。


「覚えてらっしゃらないのですか?」


「覚えてるとか、覚えてないとかじゃなくてね。カイル。わたし、あなたと係わり合いになりたくないのよ」