久遠の絆

「大司祭さま」


「…………」


「異世界の娘をすでに連れてきております。あとは神殿にて洗礼を受けさせるのみ。その日程を早急に決めて頂きたいのですが」


大司祭はゆったりと背もたれにもたれかかり、胸の前で手を組み合わせている。


目は眉に覆われていて、今どんな表情をしているのか窺い知ることはできない。


「大司祭さま」


いっこうに返事をしない大司祭をもう一度呼んだ時だった。


いきなりすごい勢いで立ち上がったのだ。


老齢とは思えない身のこなしに唖然とするカイル。


「は、なんと……しかし……はあ………かしこまりました……」


何もない宙に話しかけていたかと思うと、がっくりと項垂れてしまった。


「いかがなさいました?」


見たこともないほど生気を失っている大司祭が心配になり、カイルがそばに寄ろうとすると、大司祭はゆっくりと頭を上げ、


「お許しが出た」


「は?」


「そなたのようなものにお会いになるそうだ」


いかにも意に染まぬかのように、大司祭は大きな溜め息をついてみせると、さらに横柄な態度で言った。


「これを誉れに思うて、ご慈悲に感謝するがよい。付いて参れ」


大司祭はまたローブをずるずると引きずって歩き始めた。


(いったい誰に会わせると言うのだ?)


心当たりがないわけではなかった。


けれどその人が自分に会うとは思えない。


となれば、この神殿の長たる教皇か?


しかしそれもありえないように思えた。


死亡説すらある教皇は、ここ何年も公に姿を見せてはいなかったからだ。


(では、誰だ?)


考えても分からない。


仕方なくカイルは大司祭の後に付いて歩き始めた。