久遠の絆

神殿を入ってすぐの応接室に通されて、四半刻が過ぎていた。


奥ではなく、表。


来客用の応接室。


それだけで神殿側が、カイルを歓迎していないことがわかろうというものだ。


神殿は多くの特権が与えられ、高度な自治が許されている。


国における実質的な権限は、皇室とほぼ同等だった。


だからこその、この態度。


いやカイルだけではない。皇帝に対してもそうだった。


いつものことだから大して気にはしないが、しかしそれでも国の根幹に関わることを話に来ているのだから、もう少し対応のしようがあるのではないかとカイルは思う。


けれどこんな時でさえ、神殿の態度が変わることはなかった。


それからさらにしばらく待たされた後、扉の向こうの廊下をひたひたと歩く足音が聞こえてきた。


カイルが居住まいを正した時、重い木の扉がゆっくりと開かれ、ローブの長い裾をずるずると引きずりながら、一人の神官が入ってきた。


長い長い髭、目を覆いつくしてしまっている豊かな眉、帽子の下から流れ落ちているふさふさとした髪、すべて真っ白だった。


立ち上がり会釈するカイルに向かって仰々しく片手を挙げ、「よい」とひと言言うと、椅子に座るように促し自分も腰掛けた。


カイルが座るのを待つこともなく、

「はて、元帥どのがどのような用で参られたものか……」

と困惑も顕わに尋ねてきた。


さすがのカイルも顔を強張らせる。


「セクン大司祭さま、例の件で話をしようと申されたのは、大司祭さまではありませんでしたか?」


心持ち冷ややかなカイルの声音を気にする風もなく、セクン大司祭は豊かな眉の下の眼を大仰に見開き、


「そうであったかな……取るに足らぬことは忘れる癖があるものでな……」


そう言って、ぐふぐふと笑っている。


「取るに、足らぬこと……」


つまりそれが神殿の見解だという事か。


ここで腹を立てればこちらの負け。


カイルよりも遥かに人生の経験を積んできたこの大司祭に対するには、それ相応の忍耐が必要なのだ。