久遠の絆

「じゃ、僕。何か飲み物頂いて来ますね」


いそいそと衝立を脇に寄せたニアスは、そう言うと、部屋を出て行こうとした。


「ちょっと待って。さっき、さんざん頂いたから、もう飲み物はいいよ。だから、ここにいて」


カイルとふたりきりになってしまったら、思考がどこかにぶっ飛んでしまいそうだった。


だから、ニアスにもいてほしい。


しかしニアスにその願いは届かず、彼は丁寧に蘭の申し出を断ると、さっさと出て行ってしまった。


パタンと扉の閉まる音を最後に、シーンとする室内。


何となく、気まずい。


(ど、どうしよう。話すきっかけがないっ)


カイルのことも、まともに見られず、蘭は立ち尽くしていた。


「蘭さま」


「は、はいっ!」


びくっとして、心臓が早鐘のように打ち始める。


「どうぞ、こちらに」


カイルは椅子を勧めてくれただけなのだが、蘭の動きはぎこちなく、彼女はかくんかくんしながら椅子へと歩み寄り、座ると、大きな溜め息を吐いた。


座ってからも、俯いたまま、膝に置いた両手を弄んでいる。



「くすっ」と笑われたような気がした。


はっとして顔を上げると、カイルの薄緑色の瞳とぶつかった。


優しい光を湛えた瞳に吸い込まれそうになった。


その優しい瞳に見つめられ、蘭の鼓動も落ち着きを取り戻していった。


「怪我、大丈夫なの?」


振り絞るように、やっと声を出した。


「ええ。ご心配には及びません。こうして、砂漠まで来れたのですからね」


「そ、そうだね。何となく歩くのが辛そうに見えたから、どうなのかなって思ったんだけど」


「大丈夫ですよ」


「そう。良かった。ほんとに無事で、良かった……」


涙が頬を伝った。


止めようとしても止まらず、次から次へと溢れ出す涙に、蘭の気持ちも解き放たれたようだ。


「心配してたんだよ、ずっと」