久遠の絆

◇◇◇





蘭は食堂を抜け出し、カイルを追っていた。


いつもとは違う彼の様子が気掛かりだったのだ。


いつもとは、と言っても、どれ程彼のことを知っているのだろうか。


ダンドラークで僅かな期間を過ごしただけで、実のところ、自分は彼のどれだけを知っているのだろう。


蘭はそう思った。


けれど、彼のことを気にし始めると、居ても立ってもいられなくなるのだ。


細かいことなど気にしていられなくなり、考えるより先に動いてしまう。


カイルにとっては、余計なお節介かも知れない。


でも、そんなことも気にしていられず、蘭は胸に突き上げて来る感情のままに足を動かしていた。





カイルの与えられた部屋は、構成員の若者達が使う区画にあるらしい。


蘭やイーファンたちの部屋とは、食堂を隔てて反対側になる。


そこは元の洞窟を利用して、長い通路が張り巡らされていた。


カイルの部屋は割と食堂よりにあった。


扉は開けられており、蘭は戸口に立ってノックしようとすると、ニアスの「包帯替えましょうね」という声が聞こえてきた。


(悪いとこに来ちゃったかな)


一瞬躊躇ったものの、ノックするより先に、気配を感じたのか、ニアスが蘭を見た。


「わっ、蘭さま!」


手にした救急用具を取り落としそうになりわたわたするニアスに、それ程広くない部屋に置かれた衝立の向こうから、落ち着いた声が掛けられた。


「ニアス。包帯は後でいいから、入って頂きなさい」


「は、はいっ。蘭さま、どうぞ」


「あ、い、いいよ。別に用がある訳じゃないし。包帯、替えてあげて。出直して来る……か……ら……」


蘭が最後まで言う前に、ニアスが彼女の腕を掴んでいた。


「ニアス?!」


「わざわざ来てくださったのに、このまま帰って頂くなんて申し訳ないです。どうぞ、中に!」


唖然とする蘭に有無を言わせぬまま、ニアスは扉を閉めてしまった。