久遠の絆

「相変わらず神出鬼没な方ですねえ」


カイルが再び映像に目を移した時、ハウレン少将が感心しているというよりはむしろ、呆れたように呟くのが聞こえた。


「だが、あの人ならやってくれるだろう」


普段は茶目っ気たっぷりのお調子者で通っているゲルシュ・グレンも、戦場に立つと、人が変わったように有能な指揮官となる。


人としても、軍人としても、カイルがもっとも信頼を置いている人物なのだ。


「さて、半日でグレン中将の移動が完了し、敵軍と対峙する。そして第1師団が海上より展開。
第6師団が右翼より敵側面を攻撃。第2・第4師団は引き続き東西の敵軍と交戦。」


机上では、これで中央突破を目論む敵の包囲網が完了する。


あくまでも机上では。



『シド・フォーンが旗艦に乗りこんだという話だ』



「ふー」


カイルは珍しく溜息をつき、皮製の椅子に倒れこむように座った。


「お疲れですね、閣下」


そう言われ、部下の前で疲労の色を見せてしまったことに苦笑した。


「いや、大丈夫だ」


「あまりお休みではいらっしゃらないのでしょう。閣下にもしものことがあれば……」


帝国は終わりです。


少将の心の声が聞こえたような気がした。


けれどカイルは頭を振って立ち上がる。


「心配は無用だ。休んでいられる時ではない。これから神殿に向かう。何かあればすぐに連絡するように」


「はっ」


不満そうなハウレン少将を安心させるように微笑んで、カイルは指令本部室をあとにした。


策が功を奏するか分かるまで、今少しの時間が必要だった。