久遠の絆

「ふふ。今さら隠さなくっても。そうだねえ。現時点では、それで良しとするしかないかね。お前さんも、まだ弱っているみたいだし」


シェイルナータは嬉しそうだった。


蘭はそんなシェイルナータを、呆然と見つめ返すことしか出来ない。


どこかで信じている部分があった。


ヘラルドを今でも愛しているのだと、聞いてもなお、あの時のシェイルナータの温かさを信じていたのに。


本人から、最後通告を突き付けられた気分だった。


(わたしは何を信じればいいのか)


これでは、すべての人に思惑があるのではと疑ってしまうではないか。


そんな蘭の気持ちを読んだのか、シェイルナータは諭すように言った。


「だからさ。お前さんがまだ私を慕ってそうだったからさ。今日はあんたに別れを言いに来たんだよ。これで分かっただろう?お前さんと私は、敵だって」


「……」


「じゃあね。せいぜい足掻くといい。結局は、ヘラルドの思いのままだってことを分かっていてもね。私達もその方が張り合いがあるってもんだよ。
今回はね。お前さんをどうこうする気はないから、安心おし。さあ、用事を済ませに行かなきゃ」


シェイルナータが消える。


蘭はそれを引き止めることも、罵声を浴びせることも出来ずにいた。


また悪寒が走り、シェイルナータの張った結界がなくなったことが分かった。


「シェイル……ナータさま……」


母とも慕った女性の本心。


それを受け入れることは、今の蘭には苛酷なことだった。


もう一度指輪を見た。


(やっぱり、わたしには無理だよ。無理なんだ……)


蘭は膝を抱え、そこに顔を埋めてしまった。


なるべく丸く丸く。


それは、自衛の姿だった。







ヘラルドの送り込んだ刺客は、見事蘭の覚悟をくじいたようだ。


高笑いはヘラルドただ一人。


しかしヘラルドは、人の心が如何に柔軟で、強靭かを知らない。


それが彼の誤算。


少女の心は、まだ死んではいないのだから。