久遠の絆

「おい、カイル!カイルっちってばっ!!」


ハッとして顔を上げると、ゲルシュ・グレンの心配そうな顔がそこにあった。


その風貌に似合わぬ、澄んだ黒い瞳が、じっとカイルを捕らえている。


「グレン中将……」


いつも沈着としている青年の、思わぬ動揺を目にして、ゲルシュ・グレンは内心(しまった)という思いでいっぱいだった。


この若い元帥が実のところ非情になりきれない男であることを、よく分かっていたからだ。


「まあ、なんだ。奴に対してお前さんがひとかたならぬ想いを抱いているっていうのは、俺も良く知っているつもりだ。だからって言うんじゃないが、ちょっと言わせてもらうとだな。

奴には奴なりに思う所があってこんなことになったんだろうし、カイルっちにはカイルっちの思いがあるだろうし、こうやって目指す道が分かたれたっていうのも、運命って言やあ、運命だと俺は思う訳なんよ。
だから、ここは仕方ないことだと諦めてだな」


「分かってますよ」


その声に笑いが含まれている事に気付いて、ゲルシュ・グレンは横を歩く青年を見下ろした。


「分かって……た?」


熊のような風貌が見る間に柔らかくなっていく。


「はい。重々承知です」


「そっか、なら良かった……」


心底ほっとしている様子の中将に微笑み返しながら、カイルはこの気の優しい熊が、なぜ許可も得ず前線を離れたのかを理解していた。


(いち早く、シドの情報を私に教えるため)


彼は、彼らが親友であったことを知っている。


だからこその気遣いだった。


「まあ、なんだな。いつかきっとお互い笑って肩を抱ける日が来ると思うしさ。だからあんま気に病まないで、素敵な未来を夢見てだな・・・」


まだまだゲルシュ・グレンの独り言は続きそうである。