久遠の絆

「マトの馬鹿!」


椅子を転がして走り去るマヤ。


マトは仕方ないと言うように、溜め息を吐いた。


「マ、マヤ、どうしたの?大丈夫?」


「うん、大丈夫。でも、ちょっと心配だから行ってきてもいい?」


「うん、もちろん。行ってあげて」


「ありがとう。じゃあまた話そうね、ラン」


「うん、またね」


自分にもこんな風に優しい兄がいれば……と蘭は少し羨ましくなった。


しかし羨んだところで仕方ない。


今さらそれを望んでも、どうしようもないのだから。


「マト、ありがとう……」


彼のいなくなった部屋で、蘭は感謝してもし切れないくらいの気持ちを、思わず口に出していた。








「マヤ、待てよ、マヤ!」


ふたりはとうとう洞窟を出て、岩場の中で追いかけっこをしている。


「付いて来ないでよ!兄さんはランと話してたらいいでしょ」


「何を拗ねてるんだ。俺はお前にも友達が出来ればいいと、そう思ってるから」


「だから、それが余計なお世話なのっ」


「マヤ!」


マトはマヤの二の腕を掴み、自分の方に向かせた。


「痛いっ。離してよ!」


「あのね、マヤ。俺たちは一人で頑張ってる蘭を助けようと思って来てるんだから。腹を立てるとこ、間違ってるよ」


「そんなこと!」


分かってるよ、という言葉をマヤは飲み込んだ。


自分でもおかしいことくらい分かっている。


でも、どうしようもないのだ。


マトが他の子と会話しているのを見るのは耐えられない。


他の子が自分以上にマトと親しくなるのは許せなかった。


(だって、ずっと、わたしがマトの一番だったんだから)


この後も、マヤの苛立ちは、そのまま蘭への嫌悪という形で表されることになる。