久遠の絆

「お?そうか、すまん、すまん」


悪びれる様子もなく、熊の中将、もといゲルシュ・グレン中将は腕を解くと、また豪快
に口を開けて笑っている。


「いったい、どうされたと言うのです?」


カイルはそんな中将を尻目に表情を引き締め直すと、建物の入り口を目指して歩き始めたするとゲルシュ・グレンはぴたりと口をつぐんだかと思うと、上司の背に向かって囁くように言った。


「シド・フォーンに動きがある」


カイルの胸がドクリと波打った。


けれどゆっくりと振り向いたカイルの顔には、何の表情も浮かんではいなかった。


「ガルーダの旗艦に奴が乗り込んだと言う話だ」


「……その話をどこから?」


まだ軍の諜報部も掴んでいない事を。


「まあ、俺にもいろいろツテがあるわけよ」


ゲルシュ・グレンは事も無げに言って、今度はカイルと肩を並べて歩き始めた。


「奴は本気だって訳だ」


本気でこの帝国をぶっ潰そうと考えている。


苦虫を噛み潰したような顔でそう言うゲルシュ・グレンの横顔をちらりと見やってから、


「いずれにせよ、我々が選ぶ道はひとつしかありません」

とカイルは言い切った。


「まあ、そうなんだけど、さ」


納得する素振りを見せながら、「カイルっちはなんでも真剣に考え過ぎるから心配なんだ」と、口の中でごにょごにょ言い続けているのを聞き流しながら、カイルは


(それでも心のどこかで信じていた)

と思う。


(私は、それでも友だと思っていたかったのだ……)


胸にぽっかりと空いた穴がある。


親友である男が、こうも鮮やかに過去を切り捨てたことに対する哀愁の念が、その穴に満ちていく。


それでいっぱいになっていく穴を、カイルはまるで他人事のようにじっと見つめていた。