久遠の絆

「あんたも数奇な人生だな」


「……」


「国を背負うってのは大変だ。海賊やってたほうが、よっぽど楽だぜ。海は自由だ。どこまでも果てしない。そこで好きなように略奪し、好きなように女を漁り、好きなように食って寝る。善人じゃねえがな」


そう言って、船長はくくくと笑った。


「あんた、海賊にならねえか?」


「……断る」


「はは、まあ、そうだろうな。まだ、世界を見てるのかい?何もかも失ったって言うのに?」


「それが、俺の人生だ」


「そうか……。どん底まで落ちても、堕ちてしまわねえのが、あんたのいいとこだ。せいぜい、頑張んな」


「……」


船長はそのまま、煙管をくゆらせることに専念するようだ。


シドはゆったりと煙を吐き出す船長の横を通り過ぎ、船室へと戻ろうとした。


その目の端に何かが映った。


その方に頭を巡らすと、一隻の船が水平線に近いところに見えている。


それは、どんどん凄い速さでこちらに近付いて来ているようだった。


「船長」


シドの固い声に、船長もこちらを見た。


「あんたを追って来たな」


朝日を受け、黒光りする船体。


かつての同朋の船だった。


「こうでなくっちゃな。平穏無事な航海なんて、つまんねえ。海賊船の速さ。見せてやる!」


煙管を折らんばかりの勢いでそう咆えると、船長は操舵室へと走りこんで行った。


そして、船は一気に加速する。


逃げる方向ではない。


近付く戦艦に向かっての加速であった。


「さすが、海賊……」


シドは好戦的に笑んでいた。