久遠の絆

男は乗り込む手筈の船の船長だった。


闇を抜け出て、街灯の明かりが当たる場所に立った船長は、立派な髭をたくわえた、貫禄溢れる外見をしていた。


カイゼライトが船長と対面するのはこれで2度目だったが、いつもその貫禄に気圧されたような気分になる。


厳しい世界で生き抜いてきた男だけが持つ、風格だった。


「こっちも、そうは待てねえ。見つかっちゃヤバイのは、俺たちも一緒だからな」


「ええ、分かっています。ですが、あと少し、待って頂けませんか?」


「時間を守れない奴は使えねえ」


「彼は必ず来ます」


「……」


船長はカイゼライトを見据えた。


その眼光の鋭さに、臆することなくカイゼライトも船長を睨み返した。


睨み合う二人。


ややして、先に視線を外したのは船長だった。


「貴族の坊ちゃんだって言うから、どんなひ弱な奴かと思っていたが。なかなかどうして。そんじょそこらの野郎より、よっぽど見込みがあるじゃねえか。
どうだい、あんた。俺の手下にならねえか?重用してやるぜ」


「……」


カイゼライトは唖然とした。


まさか、海賊にスカウトされるとは思ってもみなかったからだ。


「ええっと。私にはエルブライト家を継ぐという重責が待っていますから」


努めて穏やかに断ると、船長はニヤリと笑った。


「帝国がなくなったっていうのに、家を継ぐ必要はないだろ?」


確かに、そうだ。


貴族という身分すら、無きに等しい現状だった。


エルブライト家が存続しようがすまいが、どうでもいいことに違いない。


だが。


「待っている人がいるのです」


「何?」


「私の帰りを、ずっと待っている人が……」


「女房か?」


「いいえ。ですが、大切な、かけがえのない人です」