久遠の絆

確かに無駄口を叩いている時ではなかった。


態勢を整えた兵士たちが、軍靴の音も高らかに追って来ている。


時折銃弾が何かに当たる音がするから、こちらの姿が確認できる距離にあるということか。


このまま逃げおおせればよし。


しかしその前に撃たれてしまえば元も子もない。


「あとは我らにお任せを」


「行け」


ランデルの配下と思われる数人の男たちが離脱し、走っているのはシドとランデルだけになった。


直後、向こうで激しく争う物音がした。


「これでしばらくは時間稼ぎが出来ましょう。とにかく、港に急がねば」


「ああ」


ギル・ルグナー名義の手形が偽装であるという情報が港湾に行く前に、少しでも早く港に着かねばならない。


一分でも、一秒でも早く。


だが、相手もそう易々とは見逃してくれなかった。


前方に明かりがと思う間もなく、わらわらと現れた兵士に進むべき道を塞がれたのだ。


「ちっ」


舌打ちするシドに、ランデルは懐から筒のような物を取り出し、口に宛がうと「ふっ」と息を吹き込んだ。


途端前方の兵士が数人バタバタと倒れた。


「何だ?」


「吹き矢にございますよ。さ、ここは私めに任せ、行かれませ!」


シドは一瞬逡巡した。


兄の腹心を置いていくのか?


「さあ早く!カイゼライトさまはすでに港でお待ちですぞ」


兵士たちは吹き矢を警戒して立ち止まっていた。


確かに今なら逃げられる。


だが。


「ランデル。俺は借りを作るのが一番嫌いなんだ」


「何ですと?」


ランデルは隣を見た。


しかしそこには既にシドの姿はなく。前方から次々と兵士たちの叫び声が上がったのだった。