久遠の絆

「ギャッ」という老人の悲鳴を聞いた気がしたが、シドは振り返ることなく走り出した。


その時建物の陰から数人の人影が現れ、シドを取り囲むようにして並走を始めた。


「無茶をなさいますな」


嗜めるように言ったのは、ランデルだった。


「お前もギリギリまで隠れてただろ?」


「そこまであなたをお守りする義理もございませんからな」


「なるほど」


カイゼライトの僕だというランデルに会ったのは、つい先程、あの酒場を目指して歩いている時だった。


最初警戒するシドに、ランデルは事もなげにこう言った。


「あなたさまが死のうが生きようが、どちらでも構わんのです。ただカイゼライトさまがあなたを助けたいと思っておられるから、私もあなたを助ける。それだけのことですよ」


エルブライト家の嫡男を影のように守る。


それがランデルの役目。


カイゼライトがガルーダの白亜の屋敷にいた際にも、もちろんいた。


ヘラルドの差し向けた刺客に襲われた時にも、すんでの所でカイゼライトを救い出したのはランデルだったのだ。


ランデルにとっては、主人カイゼライトがすべて。


主の弟であるシドも、カイゼライトが救えと命じたから救う。


その程度の存在だった。


むしろシドは、主を転落の人生に追い込んだ原因であるだけに、厭う気持ちの方が大きかった。


だからこその、先程の発言である。


シドもそれを分かっているだけに、それ以上言を重ねることをせず、走ることに専念している。