久遠の絆

「アニーシャ、いい加減離れたらどうだ?カイルが困っている」


「いやです。せっかくこうして会えたのですもの。絶対離しませんわ」


そうして、さらにカイルの腰に回した腕に力を入れる。


「どうしたものかな?」


兄の方が困惑していることにカイルは内心吹き出しながら、困ったようにこちらを見るジュラークⅠ世に微笑みかけると、


「さあ、殿下、私の前にお回りください。そして殿下のお顔を、もっと私によく見せて
いただけませんか?」

と拗ねる子供をあやすように言った。


「まあ、カイルったら」


するとさらりと衣擦れの音がして、ドレスの裾をひるがえしながらアニーシャが彼の前に回りこんだ。


「少しお背が伸びられたのではないですか?」


アニーシャは頬を赤く染めて、背の高いカイルを見上げながらこくりと頷いた。


「ええ、そうなの。もう、ミルアよりも高くなったのよ」


ミルアとはアニーシャ近習の女官で、彼女とは同い年だった。


「ああ、そうですか。随分大人びてこられましたね」


感心したように言うカイルに、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべながら、


「もういつカイルのお嫁さんになってもおかしくないわよ」


それにはさすがのカイルも苦笑してしまったが……。


「そのお話はいずれまた……」とはぐらかし、「そろそろ本営のほうに戻らなければなりません」と言って御前を辞す構えを見せた。


「まあ、もう少しいいでしょう。次はいつお会いできるかもわからないのに」


「アニーシャ、カイルには務めがある」


「そんなこと、知ってます!でも結婚するんですもの。
もっとカイルのこと知りたいって思ってもいいでしょう?」


彼女の言うこともよくわかる。


恋も知らぬまま、決められた相手と結婚しなければならない彼女の不安な胸のうちを思えば、『相手のことを知りたい』という気持ちを大事にしてあげたいとも思う。


けれど。


マツリゴトの前では、それは瑣末(サマツ)なことだった。