久遠の絆

その時カイゼライトの身の内から発せられた威厳は、確かにエルブライト家の当主としてのものであり、グレアムは顔を青ざめさせながらも、腰を折って忠義を示した。


「シドは我が弟だ。腹違いとは言え、確かに弟なのだ」


その時グレアムとは別の声がした。


「出てお行き」


声の方を見れば、眠ってしまったのかとさえ思っていた母が顔を上げ、カイゼライトを睨み付けていた。


「お前のような卑賎の者、さっさと出て行っておしまい!」


母は混濁しているのだ。


分かっていても、胸が苦しい。


母を抱き、自分がカイゼライトであると説得することが出来るなら。


だが、そんなことをしても意味がない。


彼女は治る見込みのない病なのだから。


「グレアム、頼む。事がすべて終われば、必ず戻って来る」


カイゼライトは、母に胸を叩かれ、足を蹴られながら、執事に頭を下げた。


「カイゼライトさま……」


主に頭を下げられるなど考えられないことだ。


グレアムは額に冷や汗を浮かべながら、

「カイゼライトさまがそうまで仰るなら。分かりました。このグレアム、最後まで奥様のお世話を致しましょう」


グレアムはその時既に、次に忠誠を誓う相手をカイゼライトに定めていたのかもしれない。


「頼む」


カイゼライトはもう一度頭を下げると、母を見た。


カイゼライトを見る彼女の瞳には、恐れと憎しみしかない。


彼を同盟軍の兵士だと思い込んでいるのだ。


次に会う時は。


さらに彼を息子だと認識できなくなっているだろう。


(だが、それでも母なのだ)


こうなって初めて、彼女の弱さを知るとは。


あの頃には分からなかった母の苦悩まで、カイゼライトは知ったような思いだった。