久遠の絆

玄関の鍵は開いていた。


あるいは連行された時そのままであるのかもしれない。


ロビーに足を踏み入れると、埃が舞い上がった。


カイゼライトは一瞬顔をしかめたが、臆することなく奥へと進んでいく。


積もりに積もった埃の上を、最近誰かが歩いた形跡はない。


勝手知ったる屋敷の中を歩いていくと、突き当たりに大きな扉があった。


そこは居間。


かつても、家族の団欒など望むべくもなかった場所だ。


そこには、いつも“主“がいた。


カイゼライトが扉を開けると、ギィーと錆び付いた音がした。


一歩踏み入れると、彼は思わぬ光りにさらされた。


全身に浴びる日の光り。


その溢れるような光の中に、その人はいた。


「母上……」


淡いグリーンの衣を纏い、さながら天使が舞い降りたような印象を受ける。


何故、この美しい人を父は愛さなかったのだろう。


「カイゼライト……」


母は花が綻ぶように微笑んだ。


「不実な息子をお許し下さい。母上」


ふわりと立ち上がった母は、ふらふらとよろめいた。


慌てて駆け寄り、体を支えるカイゼライト。


「大丈夫ですか?母上」


「ええ、大丈夫。カイゼ……ライ……ト?」


彼女はそのまま息子の顔を凝視して止まってしまった。


「母上?」


すると彼女はそれまでの柔らかな雰囲気を一変させ、カイゼライトを突き飛ばした。


「お前は誰?わたくしの可愛いカイゼライトをどこにやったの?!」


「母上……私がカイゼライトですよ」


「嘘をお言い。わたくしのカイゼライトは、もっと小さな子供です。お前は旦那様だけでなく、わたくしも断頭台に連れて行こうと言うのね!」


そう言って、長椅子に突っ伏した母を、カイゼライトは愕然とした思いで見下ろしていた。