扉近くの闇を抜けるアーチをくぐると、そこは広い庭園の脇を通るテラス。
昼の日が燦燦と降り注ぐ庭には、季節の花々が咲き乱れている。
しかしそのような景色にも目をやることなく、カイルはテラスに面して造られている扉を押し開けた。
そこからが本当の“奥”になる。
入ってすぐにある壁に据え付けられた螺旋階段を上っていった先の二階部分が、皇帝や皇子皇女達の生活スペースだった。
二階といっても、そこはそれ、とてつもない広さがあり、また廊下や階段が複雑に入り乱れ、一種迷路のようになっているのだ。
だから通常、皇族同士が接触することはない。
現在皇后はおらず、皇帝の兄弟は妹のみ。
よって、この広い敷地をたった2人の兄妹が使用していることになる。
ここで働く使用人は、無駄に多いのだが……。
皇帝が日常を過ごす区画にようやく辿り着き、皇帝の居室に通じる扉をノックするとすぐに開けられた。
そこには皇帝その人が立っていた。
いつもそうだ。
カイルの来るときには、侍女も近習の小姓も遠ざけられるのだ。
「少し遅かったな」
責めるように言うジュラークⅠ世に、カイルは軽く苦笑した。
「報告書はお読みになりましたか?」
皇帝の苛立ちを受け流して、カイルは穏やかにそう言った。
「いつもの通り、代わり映えのない、な」
拗ねているようにも聞こえる。
「あなたがそれを言っては……」
カイルは呆れたように小さく呟いて、いつもの決まった椅子に腰掛けた。
「望んで始めた戦争ではない」
着座することなく言い放つ皇帝を、カイルは静かに見返した。
そして、すっと視線を外し、「異世界からの客人にお会いにならないのですか?」とまったく違う話題を始めたのだ。
昼の日が燦燦と降り注ぐ庭には、季節の花々が咲き乱れている。
しかしそのような景色にも目をやることなく、カイルはテラスに面して造られている扉を押し開けた。
そこからが本当の“奥”になる。
入ってすぐにある壁に据え付けられた螺旋階段を上っていった先の二階部分が、皇帝や皇子皇女達の生活スペースだった。
二階といっても、そこはそれ、とてつもない広さがあり、また廊下や階段が複雑に入り乱れ、一種迷路のようになっているのだ。
だから通常、皇族同士が接触することはない。
現在皇后はおらず、皇帝の兄弟は妹のみ。
よって、この広い敷地をたった2人の兄妹が使用していることになる。
ここで働く使用人は、無駄に多いのだが……。
皇帝が日常を過ごす区画にようやく辿り着き、皇帝の居室に通じる扉をノックするとすぐに開けられた。
そこには皇帝その人が立っていた。
いつもそうだ。
カイルの来るときには、侍女も近習の小姓も遠ざけられるのだ。
「少し遅かったな」
責めるように言うジュラークⅠ世に、カイルは軽く苦笑した。
「報告書はお読みになりましたか?」
皇帝の苛立ちを受け流して、カイルは穏やかにそう言った。
「いつもの通り、代わり映えのない、な」
拗ねているようにも聞こえる。
「あなたがそれを言っては……」
カイルは呆れたように小さく呟いて、いつもの決まった椅子に腰掛けた。
「望んで始めた戦争ではない」
着座することなく言い放つ皇帝を、カイルは静かに見返した。
そして、すっと視線を外し、「異世界からの客人にお会いにならないのですか?」とまったく違う話題を始めたのだ。


