カッカッと軍靴を鳴らして、カイル・アルファラが城の回廊を歩いている。
城の中庭をぐるりと囲むそれは、城の表と奥を分ける役目も負っていた。
回廊の北側、そこにある大きな木の扉の向こうには、皇族及び特別な許可を得た上級貴族しか入ることは許されない。
そこは厳重な警備の元にあり、蟻の子一匹、その警備をすり抜けることはまず無理であ
った。
扉に辿り着くまで回廊を随分歩かなければならず、決まってそこにはカイルの姿を一目見ようと待ち構える貴族の娘たちの姿があった。
彼が目の前を通り過ぎるたびに、黄色い声がそこここで上がる。
しかし彼のほうはまったく我れ関せずで、表情ひとつ崩すことなく、歩調を変えることもなく、淡々と目指す場所に向かって歩いて行くのだ。
日に一度、朝か夕に行われる皇帝へのご機嫌伺い。
それは現皇帝が即位し、彼が元帥に任ぜられた時から変わることなく続けられてきた日課だった。
なんのことはない。
かつて親友だった者達が、立場が変わり、時間を共有できなくなってしまったために編み出した苦肉の策だったのだ。
一瞬でもいい。
深い苦慮の中にあるお互いの精神を正常に保つためにも、この日に一回の逢瀬は必要なことだった。
他の者たちはただ、元帥が皇帝を訪ね戦況云々を報告しているに過ぎないと思っている。
それでいい。
彼らの胸のうちは、彼らだけが知っていればいいのだ。
カイルが扉に近付くと、警備の者がさっと敬礼し、一人が重い扉をゆっくりと開けた。
「ご苦労」と短く言って、カイルは扉の向こうの闇に姿を消した。
またゆっくりと扉が閉められる。
すると切ない溜息が聞こえてきた。
カイルの消えた先を切なげに見つめる娘たち。
美しい元帥閣下に会うために、また一日待たなければならない
貴族の娘たちはひとしきり会話に花を咲かせ、自らの仕事(行儀見習いのお針子がほとんどだ)に戻って行った。
城の中庭をぐるりと囲むそれは、城の表と奥を分ける役目も負っていた。
回廊の北側、そこにある大きな木の扉の向こうには、皇族及び特別な許可を得た上級貴族しか入ることは許されない。
そこは厳重な警備の元にあり、蟻の子一匹、その警備をすり抜けることはまず無理であ
った。
扉に辿り着くまで回廊を随分歩かなければならず、決まってそこにはカイルの姿を一目見ようと待ち構える貴族の娘たちの姿があった。
彼が目の前を通り過ぎるたびに、黄色い声がそこここで上がる。
しかし彼のほうはまったく我れ関せずで、表情ひとつ崩すことなく、歩調を変えることもなく、淡々と目指す場所に向かって歩いて行くのだ。
日に一度、朝か夕に行われる皇帝へのご機嫌伺い。
それは現皇帝が即位し、彼が元帥に任ぜられた時から変わることなく続けられてきた日課だった。
なんのことはない。
かつて親友だった者達が、立場が変わり、時間を共有できなくなってしまったために編み出した苦肉の策だったのだ。
一瞬でもいい。
深い苦慮の中にあるお互いの精神を正常に保つためにも、この日に一回の逢瀬は必要なことだった。
他の者たちはただ、元帥が皇帝を訪ね戦況云々を報告しているに過ぎないと思っている。
それでいい。
彼らの胸のうちは、彼らだけが知っていればいいのだ。
カイルが扉に近付くと、警備の者がさっと敬礼し、一人が重い扉をゆっくりと開けた。
「ご苦労」と短く言って、カイルは扉の向こうの闇に姿を消した。
またゆっくりと扉が閉められる。
すると切ない溜息が聞こえてきた。
カイルの消えた先を切なげに見つめる娘たち。
美しい元帥閣下に会うために、また一日待たなければならない
貴族の娘たちはひとしきり会話に花を咲かせ、自らの仕事(行儀見習いのお針子がほとんどだ)に戻って行った。


