久遠の絆

◇◇◇






蘭の、混沌としたままの心を置き去りにして、体だけは見る間に回復していった。


凍傷も軽度であったからか、跡が分からないくらいに綺麗に治っている。


「もう、そろそろ、よろしいでしょうか」


そんな状況を見て、イーファンが床を上げることを許可したのは、ここに来てすでに3週間も経っている頃だった。


久しぶりに立ち上がると、ふらふらとして覚束ない。


イーファンがすかさず肩を抱いて支えてくれた。


「ごめんなさい」


「いえ。どうぞ遠慮なく凭れて下さいね」


「はい……」


イーファンは中性的な顔立ちからは想像しにくい、がっしりとした体つきをしていた。


そんな彼に寄りかかるのはどぎまぎしてしまうけれど、体に力が入らないのだから仕方ない。


連れて行かれたのは、イーファンの自室だった。


一つだけある丸窓からは、明るい昼の日差しが入って来ていた。


ぼんやりとした雪山の光とは違う、生命力に溢れた光だった。


そこにはもう一人、その日差しに負けないくらいの、明るい空気を纏った人がいた。


イーファンとは対照的な、男らしい人だった。


「シャルティだ」


言って差し出された手を、おずおずと握り返した。


その声には聞き覚えがあった。


「もしかして、わたしを助けてくれた人ですか?」


あの闇の中で抱き上げ、「行こう」と声を掛けてくれた?


「そう。よく分かったね」


「ありがとうございました」


頭を下げる蘭に、シャルティは「構わない」とでも言うように手をひらひらさせながら、照れたように笑っている。


「さあ、おふたりさん。適当に腰を下ろしてもらえますか?」