久遠の絆

その翌日。


アトゥマにあるショッキングな一報がもたらされた。


雪の山脈を懸命に越え、砂漠を渡って来た若者がもたらした報告とは。


『クーデター』


ガルーダ総裁シド・フォーンが、側近にその座を奪われたという報告だった。


帝国の消滅と同時に起こった、クーデター。


総裁シド・フォーンの行方は分からず、処刑されたという噂もあるという。


その報告を受けたシャルティは、病床で拳を思い切り敷物に叩き付けた。


「事態は悪くなる一方だっ!」


「落ち着いて下さい、シャルティ」


「これが落ち着いていられるかよ。イーファン。もう動いたっていいだろ?どこも悪いところはないんだから」


「いけません」


イーファンはシャルティの頬を両の手でそっと包んだ。


それから唇と唇が付きそうなくらい顔を近付けた。


「シャルティ。あなたは私の大切な存在。無理をして欲しくはないのです。いずれ嫌というほど動いて頂くことになるのですから、休める時に休んで下さいね。あなたには瑠璃の巫女を守って頂かなくてはならない。もう国と国というレベルの問題ではないのです。あなたなら分かって下さるでしょう?私の大切なシャルティ」


そうやって、赤子をあやすような声音で諭されたシャルティは、心持ち顔を赤らめながら素直に頷いた。


「よろしい」と呟きながら頬から手を離したイーファンは、素っ気なく立ち上がると、

「ヘラルドという男は最初から総裁の座を奪うつもりだったのでしょうか」

と、既に頭を切り替えたようだった。


同性であるイーファンについドキドキしてしまったシャルティは、何となく居心地の悪さを感じながら、(あいつの顔のせいだ)と親友のせいにしている。