久遠の絆

彼の柔和な雰囲気から、傍にいられてもさほど煩わしいとは思わないものの、疲弊しきった心身ではなかなか人の話を聞くのは難しい。


彼もその辺りは分かっているのか、「手短に終わらせましょう」と言って話し始めた。


「私はイーファンといいます」


「イーファン……」


「はい。雪山であなたを見つけたのは私の友人ですが、今は寝台に縛り付けていますから、ご挨拶はまた後日にさせて下さいね」


「寝台に?」


「ええ、そうでもしなければ、動き回って困るのです」


「怪我でもされたんですか?」


しかしイーファンはその問いには答えず、話を次へと進めた。


「あなたはご自分がどのような状況にあったか、覚えていますか?」


蘭は枕の上で頭を横に振った。


「そうですか……。ではあなたに付きまとっている物の存在は?」


胸がどくりと波打った。


真黒い父の姿が甦る。


「ご存知のようですね」


イーファンはそう言うと、小さく息を吐いた。


「あれは今もあなたの傍にいます」


「え……」


「驚かせてすいません。ですが、それが現実です。その時は逃れることが出来ても、あれはいつもあなたの側にいるのですよ」


「……どうして……」


びくびくしながら、枕の上で頭を巡らし周りを確認する蘭に、イーファンは同情の色を浮かべながら微笑んだ。


「大丈夫です。今は私が張った結界で入って来られないみたいですから」


「……」


蘭は言葉なくイーファンを見返した。


「何故私がそんなことを、とお思いですね」


蘭は目を見開いた。


どうやら、この人も不思議な力を持つ人らしい。