極限の状態の中で思ったのは、やはり彼だった。
だが、もしまた彼に会ったとしても、まともに彼の顔を見られるとは思えない。
自分でも手に負えない精神の混乱。
手首の傷が久々疼いた。
そこを握り、耐えるように深い息をついた。
指輪の石は瞬き続けている。
ドアがノックされた。
蘭は考えることに疲れて再び目を閉じていたが、その音に瞼を開くこともせず寝返りを打った。
今は誰とも顔を合わせたくない。そんな気分だった。
入って来たのは医者でもあるのか、蘭の側まで来ると、彼女の脈拍や全身の様子を診ているようだった。
蘭はその間、早く出て行ってくれることばかりを考えていたが、いっこうに出ていく気配がない。
診察は終わっただろうに、彼女の側に佇んだままだ。
こっそり薄目を開けてみると、生成りの服が見えた。
長いローブのような服。
神官が着るそれと似ていた。
「目覚めましたか?」
もっとよく見ようと、自分で思うよりも大きく目を開けていたらしい。
視界に、眼前に立つ人の笑顔が飛び込んできた。
優しい声音と服装から女性かと思ったが、どうやら男性らしい。
中性的な面立ちながら、藤色の瞳には強い光が宿っていた。
「ご気分は?」
「あなたは誰?」
互いの言葉が重なった。
その人はくすっと笑うと、
「そうですね。まずは説明しましょうか」
そう言って、椅子を引き寄せた。
だが、もしまた彼に会ったとしても、まともに彼の顔を見られるとは思えない。
自分でも手に負えない精神の混乱。
手首の傷が久々疼いた。
そこを握り、耐えるように深い息をついた。
指輪の石は瞬き続けている。
ドアがノックされた。
蘭は考えることに疲れて再び目を閉じていたが、その音に瞼を開くこともせず寝返りを打った。
今は誰とも顔を合わせたくない。そんな気分だった。
入って来たのは医者でもあるのか、蘭の側まで来ると、彼女の脈拍や全身の様子を診ているようだった。
蘭はその間、早く出て行ってくれることばかりを考えていたが、いっこうに出ていく気配がない。
診察は終わっただろうに、彼女の側に佇んだままだ。
こっそり薄目を開けてみると、生成りの服が見えた。
長いローブのような服。
神官が着るそれと似ていた。
「目覚めましたか?」
もっとよく見ようと、自分で思うよりも大きく目を開けていたらしい。
視界に、眼前に立つ人の笑顔が飛び込んできた。
優しい声音と服装から女性かと思ったが、どうやら男性らしい。
中性的な面立ちながら、藤色の瞳には強い光が宿っていた。
「ご気分は?」
「あなたは誰?」
互いの言葉が重なった。
その人はくすっと笑うと、
「そうですね。まずは説明しましょうか」
そう言って、椅子を引き寄せた。


