久遠の絆

彼女は蘭を取り巻く境遇に何か思うところがあったのだろうか。


そして蘭を抱く腕にさらに力を込めた。


その腕の中で、蘭の細い肩が震えている。




アンは不惑を迎えた女性で下級貴族の出身だった。


そしてカイルの乳母となり、その役目が終わった後も、その人柄を見込まれてこの別邸の侍女頭を勤めている。


赤色がかった褐色の髪を綺麗にまとめ、ゆったりとしたドレスを身に纏い、よくアイロンの当てられた真っ白のエプロンを付けていた。


抱きしめられ声を上げて泣きながら蘭は、アンから漂う鼻をくすぐるようないい匂いを嗅ぎながら、次第に落ち着いていく自分を感じていた。


(本当のお母さんて、こんな人を言うのかな……)


初めて感じる大人の女性の温かさ。


トクントクンと優しく打つ鼓動が聞こえる。


温もりに包まれ、それを聞いているうちに蘭はいつの間にか眠ってしまっていた。


「まあまあ、赤ん坊みたい……」


笑いを含んだ声でそう呟いたアンは、慈愛に満ちた目でしばらく蘭を見下ろしていたが、そっと抱き上げると傍の長椅子に横たえた。


「軽いのね……」


身長の割には、それほどの体重しかないのか、この子は……。


安らかに眠る蘭の寝顔を、アンは痛々しそうにいつまでも見つめていた。