久遠の絆

そんな心地良さも束の間だった。


再び一際大きな硝子の破砕音がして、シャルティは身構えた。


後ろに気配がして振り返ると、そこには今までなかったモノがあった。



巨大な、黒い繭のようなモノ。



「何だ、あれは……」


呆然とするシャルティの目の前で、繭の黒糸は生き物のようにうねうねとうごめいている。


(こいつが元締めか?いや、待て……)


目を凝らしてよく見れば、黒糸に見えていた物は、霧のような煙のような物質。


それが何かを取り巻くようにうねっていたのだ。


「今までなかったぞ。あんなモノ」


短銃を構え直し、一歩一歩足元を確かめながらそれに近付いて行った。


近付くにつれ、圧迫感を感じるようになった。


そして感じる寒気。


言いようのない寂寥感。孤独。


いろいろな負の感情が綯い交ぜになって、そこから溢れ出ているようだった。


「イーファン、これは俺の手に余るぞ」


まったくの専門外。どう対応すればいいのか見当もつかない。


「……とりあえず近付いてみるか」


さしものシャルティも不安と緊張の色が隠せない。


自然と独り言が多くなるのも仕方のないことだった。


クレバスの底のこの空間。


硝子の割れるような音。


そして、この巨大な黒い繭のようなモノ。


すべてが辻褄の合わないことだらけ。


これから何が起こるのか、予測が付かなかった。


慎重に歩を進めるシャルティの耳に、また先程の声が聞こえてきた。


『出て行って……』


「そういう訳にはいかないんだ」


そのシャルティの返事に呼応するかのように黒い煙が渦巻いた。


時折シュッと、シャルティの方に向かって伸びる部分まである。


「生きてんのか?」


そんな筈はないのは分かっていたが、触手のように伸びるそれは、そう思ってしまうのも仕方ないくらいの意志を持った動きをしている。