久遠の絆

(俺を落とそうとしてるのか?……だったら。振り落とされる前に自分で落ちてやるさ)


ロープを握る力が弱くなった指を、自らの意志で開いた。


突風は止み、支える物をすべてなくしたシャルティは、闇の中を下へ下へと落ちて行った。








(どこまで落ちるんだ、これ……)


有り得ない距離を落ちていた。


ロープを手放してから随分経つというのに、シャルティはいまだ落下中だった。


(いくらなんでも、こんな深いクレバスあるか?)


クレバスの底は当然地面であり、その距離には限度がある筈だ。


(それに、この浮遊感)


ふわふわとまでは行かないが、シャルティは不思議な浮遊感を感じていた。


落ちているのに怖くないのだ。


真綿に包まれているように空気抵抗は少なく、スピードはとても緩やかだ。


(俺もとうとう不思議の世界にこんにちはか……)


イーファンの持つ能力でさえ、初めは信じられなかったのだ。


まさか自分の身に降り懸かろうとは思いもしなかった。


(このまま落ち続けるってことはないよな)と思った刹那、体中に電流が走ったような衝撃を受けた。


「うわっ!」


体が海老反りに反り返る。


まばたきすらできず、冷や汗が溢れ出した。


ビリビリと身体の中を走り回る電流。


「くっ」


意識だけは手放すまいと踏ん張っていたが、とうとうシャルティは気を失ってしまったのだった。