久遠の絆

「カイルさまは蘭さまの前だと随分素直におなりですわね」


カイルが辞して行った後、しばらくしてアンがそう言った。


窓辺に椅子を寄せ、物思いに耽っていた蘭は、その声にゆっくりと振り向いた。


「カイルが?素直?」


「ええ。顔を赤くされたり、慌てられたり、そんなカイルさまはあまり拝見できませんわ」


楽しげにクスクス笑うアンに、蘭はなんと答えていいのか分からなかった。


素直?


そうだろうか……。


あんなにいっぱい胸の中に隠し事をしている人が素直なんて、とても思えないけど。


表情は豊かだとは感じるけど。


それが、わたしの前では素直だということになるんだろうか。


カイルをずっと知っているアンがそういうならそうなのかもしれないけど。


蘭はそう言われて嬉しい反面、なんとなく腑に落ちないでいた。


「わたしはだめな人間だから……」


「今なんと?」


「わたしはだめな人間だから、カイルも気を遣っていろいろ励ましてくれてるんだと思うわ」


「まあ、ご自分のことそんなふうに仰ってはいけません……」


アンは辛そうに顔を歪めた。


「だって、もしわたしがまともな人間なら、生まれてきて良かった人間なら、父も母ももっとわたしを」

受け入れてくれたはず……。


最後の言葉を飲み込み俯いてしまった蘭に、アンはゆっくりと近付いてきた。


そしてふわりと蘭の肩を抱いたのだ。


驚いて顔を上げる蘭に、


「生まれてきてはいけない命なんてないわ。生まれてきた後はもちろん辛いことも多いでしょう。でも誰にもその命を否定することはできない。
あなたが生まれてきてはいけなかっただめな人間なんて、それを決めるのはあなた自身なのよ」