久遠の絆

◇◇◇






尾根に立てば風が強かった。


屈強なシャルティであっても、ともすれば吹き飛ばされそうになるくらいだった。


風に身体を揺さぶられ、巻き上げられた雪に顔を打たれながら、シャルティは眼下に見える件のクレバスを見下ろしていた。


(さて、どうやってあそこまで下りるかな……)


近付けば、その大きさがますます目に映る。


(あそこに少女が落ちたのだとすれば、やはり助かる見込みなど……)


暗い考えが過ぎりそうになり、急いであそこまで行く方法へと頭を切り替えた。


(この崖の斜度なら、どっちみち滑るしかないか)


足を掛ける場すらない氷河に覆われた崖だった。


(考えていても始まらん)


シャルティは背負っていたショートスキーを下ろし足に嵌めると、尾根から氷河へと滑り出した。


長いスキーよりも短いもののほうが、傾斜のある斜面の場合は滑りやすい。


(もしもの場合を考えて持って来ておいて良かったな……)


カチカチに凍った斜面を手を着きながら少しずつ下りていく。


徐々に迫るクレバス。


その大きさがいよいよはっきりとしてきた。


(しかし、あんなにはっきり口を開けてる所に落ちるか?)


ふと、そう思った。


(雪に隠れているならまだしも、こんなに存在を主張しているクレバスに?)


よほどぼんやり歩いていたか、自分から落ちない限りは、注意して通り過ぎそうなものだ。


(ほとんど自殺行為だな)


そう思った時、『シャルティ、気を付けて!』というイーファンの声が頭の中にこだました。