久遠の絆

帝国一の美貌を謳われた秀麗な顔に、生々しい傷が走っていた。


思わず顔をしかめてしまった自分をニアスは心の中で一喝して、枕元に置かれていた水差しをカイルに差し出した。


「いや、いい」


「少しでも」


「今は何もいらないんだ。何も、欲しくない」


「そんな!だめですよ」


カイルはひとつのことに没頭した時、寝食を忘れてしまうことがよくあった。


ニアスはそんな彼を、むしろ格好いいと思って見ていたのだ。


自分もそんな風に夢中になりたい。


そう思っていた。


しかし今は違う。


今は、食べてしっかり栄養を摂らなければ、治るものも治らない。


「元気になって、同盟を見返してやらなければならないんですよっ!」


唾を飛ばして言い募るニアスだったが、カイルの反応は鈍かった。


こんなに手応えのないカイルは初めてだ。


「カイルさまっ!」


名を呼んでも、虚ろに天井を見つめるだけだ。


「カイルさまが立ち上がらなければ、たくさんの人が苦しんだままなんですよ。同盟の支配下で帝国の民が虐げられてるんです。それに、それに、蘭さまの死を無駄になさるんですか?」


その名を聞いたとき、初めてカイルの薄緑色の瞳に光が灯ったような気がした。


「蘭……さま……?」


「そうですよ。この世界を救うために自分を犠牲になさった方です。このままでは同盟によって世界は崩壊して、蘭さまの死までが無駄になるんですよ」


「……」


ニアスは。


蘭が生きていることを知らない。


だが、カイルは。


「そうだ。蘭さま……」