久遠の絆

本来なら、こんな場所にいる筈のない人だった。


帝国の筆頭貴族、そして軍の最高司令官として、最高の栄華の中にいる筈の人だった。


それが、スプリングのまったくないベッドに寝かされ、まるで世捨て人のように外の世界を拒絶している。

カイルのこんな姿を見たくはなかった。


ニアスは唖然とするだけでは済まなかった。


薄く開けた扉の陰で、ニアスはぎゅっと瞼を閉じた。


「カイルさま……」


嗚咽混じりに名を呼んだ。


「……ニアスか……?」


はっとして顔を上げると、カイルはこちらを見てはいなかった。


見ることなく、気配だけで近習の少年だと気付いたらしい。


ニアスはまたそろそろと扉を押し開けると、体を中に滑り込ませた。


そしておずおずとした態度で固まってしまった。


「こちらにおいで」


そう促されても、なかなか足が動かなかった。


まず何と言って声を掛けていいのか、そればかりを考えていた。


「ニアス」


「は、はいっ!!」


「事後処理は済んだのか?」


「あ、あの……」


ニアスは、ジャングルの集落に住む兄妹と別れたあと、その集落の復興作業部隊に加わっていたのだ。


カイルの負傷の知らせをグレン中将から受け、急遽この場に駆けつけたのだった。


「まだ、まだです。みんな精神的な傷が深くて。……心療医も、今の国の状態ではなかなか見つかりません」


「……そうか……」


カイルは苦しげに深く息を吸い込んだ。


「大丈夫ですか?」


慌てて駆け寄る。


そこで初めて、ニアスはまともにカイルの姿を目の当たりにしたのだった。