久遠の絆

「あのね、カイル。わたし本気で言ったんじゃないのよ。そりゃ直接お礼言いたいけど無理なことはわかるし。カイルからよろしく言っておいてくれたら、それでいいからさ」


慌ててそう言うと、見る間に彼は真っ赤になった。


(え?赤いよ……)


カイルは顔を赤くしたままコホンとひとつ咳払いをして、「取り乱したところをお見せして申し訳ありません」と呟くように言った。


(う~ん、今日はカイルのいろんな姿が見えて、おもしろいなあ)


蘭は嬉しかった。


やはり世界の違う人。


遠いところにいる人。


そう思ってしまうことの多い彼に、少し近付けたような気がしたのだ。


彼も感情の起伏のある生身の人間なのだ。


森の中の邸宅は静寂そのもので、しばらく室内は鳥の囀りしか聞こえなかった。

ゆっくりお茶をすすりながら、今の幸せを噛み締める蘭。


(ここに来ることができて、本当に良かったあ)


顔が自然に綻んでくる。


一人でにこにこしている蘭を、さすがに訝しく思ったのかカイルが問い掛けるような眼差しを送ってきた。



「ん?ううん、なんでもないよ。ただねえ、もうわたしは絶対ここに傷をつけたりはしないだろうと思うの」


そう言いながら包帯の巻かれた手首を差し出すと、カイルは切れ長の眼を少し細めて頷いた。


「私がお傍にいる限り、もうけっして蘭さまに辛い思いはさせません」


力強く言い切られたその言葉にどきどきして、何も言えなくなって俯いた。


(なんでカイルは、わたしの欲しい言葉ばかり言うんだろう)


「蘭さまが今までどのようなお辛い思いをされてきたか、それは私には計り知れないものであると思います。しかしそれでも私は蘭さまの力になりたい。そう思っているのですよ」


また泣きそうになって、でも泣けなかった。