久遠の絆

◇◇◇






静かな幕開けだった。


歓迎も何も無い。


いっそ気持ちいいくらいの静けさだった。


シドは母艦から降り立つと、その閑散とした空気をむしろ喜ぶように表情を和らげた。


「帝国を破壊した者には、ふさわしい始まりだ」


そう呟いたのを聞いた者はいない。


つい先刻まで皇宮のあった場所を遠目に見ながら帝国軍の本営であった建物に着いた。


そこで主都防衛に当たっていたハウレン少将以下一個師団は、すでに捕虜として囚われの身となっていた。


これより彼らは劣悪な捕虜生活の中で、自らの処遇を決める裁判を待つことになる。


「これが帝国の本営か……」


かつての記憶がないシドは、初めて来た場所として物珍しげに見渡している。


「こちらが司令官室です、シドさま。先程まで元帥の部屋であった場所ですな」


にやりと笑うヘラルドを横目に、シドは司令官室に入って行った。


そこは調度と言えば椅子と机だけの、殺風景な部屋だった。


自分の身の回りにはまったく興味の無かった元帥らしい部屋だった。


「ここは、これよりシドさまのお部屋となるのです」


「ふん、まあ、いいさ。何も無いほうが、かえって物が増やせて面白い」


そう言いながら、シドは革張りの椅子に身を投げるようにして座った。


「式典についてですが……」


シドが落ち着くのを見計らって、ヘラルドがおもむろに話し始めた。


「そういうことはお前に任せる、ヘラルド」


「はい、もちろんシドさまのお手を煩わせるようなことは致しません。ですが、二・三確認を」


「……何の確認だ?」


「まずは巨大な統治国家となったこの国を何と呼ぶか」