久遠の絆

「やはり、不味かったのでは?」


カイルが申し訳なさそうに言った。


ううんと蘭は頭を振る。


「では…………」


「美味しかったからよ」


「え?」


カイルもアンも不思議そうな顔をしている。


「あんまり美味しかったから、感動しちゃって……。ごめんねえ。余計な心配かけちゃったねえ」


ようやく止まった涙。


頬にその跡を残しながら、蘭はえへへと笑った。


しかし明らかに無理をしているように思える。


けれど蘭はその涙に意味はないことにしたがっている。


蘭よりも年長で、遥かに人生経験を積んでいるカイルたちは、そのことを瞬時に見破っていた。


本人が話したくないことを無理には聞き出せない。


だから2人は蘭のことを案じつつも、それ以上の詮索はせずに、蘭と同じように作り笑いを浮かべたのだった。


その後蘭は「美味しい美味しい」と言いながらクッキーを平らげた。


「まあ、伯爵夫人がきっとお喜びになりますわ。ねえ、閣下」


「ええ、そうですね」


「いつかお母さまにお礼が言いたいわあ」


と蘭は何気なく言ったことなのに、カイルは


「母にお会いになりたいと?しかし今の状況では、こちらに母を招くわけにも行きませんし。かと言って、蘭さまの思し召しとあらば、とてもありがたく存じますし。困りましたね」


と本気で考え込んでしまったのだ。


(うわ~、この人、ほんとに真面目なんだ~)