久遠の絆

今のシドには、帝国でカイルと親しくした記憶がない。


人格の変化によって、記憶までなくしてしまったのだ。


当然恋した少女のことも覚えてはいなかった。


彼にとって帝国は、元帥カイル・アルファラは、倒すべき相手でしかないのだ。


「総帥もこのまま前線に向かわれますか?」


「当然だ。帝国が滅びるさまをすべて見届けてやる」


司令官席に泰然と座り、シドはいかにも高みの見物といった風情だ。


目の前のスクリーンに映し出される前線の光景は、どれも同盟軍の優勢を示している。


短期間で開発された最新の艦船たちは、圧倒的な火力をもって帝国軍に苦戦を強いていた。


明らかに同盟軍に勝機がある。


それは予想された展開であったにせよ、帝国軍の将校たちには屈辱的な戦況であった。


世界最強を誇った帝国軍。


今やその面影はどこにもない。


彼らの装備はすでに旧式のものであり、唯一最新の小型戦闘艇『アザゼル』だけではとても同盟軍に太刀打ちできなかった。


「いっそ気持ちいいくらいの無様さじゃないか」


シドはそう言ってほくそ笑んだ。


その傍らでヘラルドも狡猾な笑みを浮かべている。


彼らはもはや勝利を確信していた。


それでも手加減するつもりはない。


”二度と起き上がることの出来ないように徹底的に叩き潰す。”


それが停戦協定を無視してまで戦闘を再開した、最大の目的だからだ。


スクリーンから明るい光が漏れる。


フラッシュのように断続的に映し出される光。


それは次々と撃墜されていく、帝国軍艦船の最後の輝きだった。