久遠の絆

「では、そのような方向で進めるように致しましょう」


「待って!」


「なんです?」


「本当に、いいの?」


「嫌がる方と、無理に結婚することなど出来ないでしょう」


「……カイル……ひとりで全部背負い込むつもりなの?」


「……」


「そんなの、いけないよ……」


「たったひとりで、縁もゆかりもないこの世界を救おうとしている人がいます」


「え?」


「私はその人の助けとなることはできない。いつもただ頑張れと声を掛けることしかできない。だから、せめて、この世界の均衡を保つために、この帝国を守り続けるしかないのです。
それしか、私に出来ることはない」


カイルの悲愴な思いに、アニーシャは言葉をなくした。


寡黙な元帥の心のうちを知ることはなかなか難しい。


しかし今その一端を垣間見たような気がしていた。


彼は自信家というわけではないのだ。


ただ自らの信念と、そして責任とを持って、迷いながらも必死に前だけを向いて進もうとしている。


そういう人なのだ。


それを知ったからには、自分には彼を止めることはできない。


アニーシャは諦めにも似た思いで溜め息をついた。


「わたくしはあなたと一緒には歩めないわ。ごめんなさい」


そうだとしても、ひとりになっても、彼は一心に前だけを見続けるのだろう。


カイルは柔らかい微笑みをアニーシャに返した。


そして、その心は再び、南の大陸にいる少女へと飛んでいた。


帝国がまた世界の覇者となり、彼女を迎えに行くことができるように。




どうか、その日まで、無事で……。