久遠の絆

アニーシャの言葉が胸に突き刺さった。


そして物心ついたときから持っていた信念にひびを入れた。


帝国が帝国であり続けることをはっきり否定した皇女の言葉。


「ではアニーシャさまは、皇女殿下は、今のままで満足だと、そう仰るのですか?」


「だって仕方ないじゃない。今の状態はなるべくしてなったことなのだし。……カイルが……後悔してるのは知ってるよ」


「後悔?」


「条件最悪の停戦協定に調印したこと。責任感じてるんでしょう?」


「……」


「でも、それは、兄さまを含めてみんなで決めたことでもあるんでしょう?だったらあなたが責任感じることないじゃない。あなただけがこの国を背負ってるって思ってるんだったら、間違いよ」


「それが、私の存在意義だからです。アニーシャさま」


アニーシャは分からないというように首を振った。


「アニーシャさまのお気持ちはよく分かりました。お考えも含めて。ですが、これは高度に政治的な問題であって、感情論ではない。帝国はどのような時でも、世界の指導者でなくてはならないのです。同盟に、シド・フォーンに与することはできないのです」


「そんなっ!」


「たとえ帝位に就かずとも、私は先頭に立って戦い続ける所存です。アニーシャさま」


「……わたくしと、結婚しなくてもいい、と言うの?元帥のままで戦うと?」


「はい」


心の中でひびの入った信念を叱咤しながら、カイルはアニーシャを見据えていた。


ぎりぎりのところで何とか立っている。


カイルはそんな自分を自覚しながらなお、自らの進む道をひとつに搾っている。


そうしなければ、ここにいる意味がない。


そう固く信じているからだ。


「そこまで殿下が私との結婚を拒まれるなら白紙に戻しましょう。私もこれ以上殿下のお心を煩わせることはしたくありません」


アニーシャは唇をぎゅっと噛んで、何かを考えているようだった。