久遠の絆

扉をノックすると、しばらくしてアニーシャ自らが扉を開けた。


侍女の姿はない。


「おひとりでおられたのですか?」


そう訊くと、こくりと頷いた。


「一人で考えたかったの」


「……」


それでもアニーシャはカイルを追い返すことはしなかった。


「入ってもよろしいのですか?」


「いいわ。わたくしも話をしたかったの」


一瞬ふたりの視線が交錯した。


アニーシャの亜麻色の瞳が少し潤んでいる。


(やはりアニーシャは……)


その時カイルは確信に近い思いを抱いた。


ふいっと視線を外したアニーシャは、そのまま安楽椅子に腰掛け、気だるげに肘置きにもたれかかった。


「お疲れですか?」


心配そうに声を掛けるカイルに、アニーシャはあいまいな笑みを返すと、

「そうね。いろいろ考えて、疲れちゃった」

と自嘲気味に答えた。


「……何を、お考えに?」


「国のこれからと、あなたとの結婚、そして自分の幸せについて」


奇しくもふたりが考えていたことは同じだった、


彼らそれぞれが、その微妙な問題の間で揺れているのだ。


「カイルの好きな人って、どんな人?」


いきなり単刀直入な質問をしてきた許婚に、カイル苦笑した。


「アニーシャさまは勘違いをされている」


「勘違い?どうしてそんな風に言うの?何故自分の気持ちを偽るの?」


質問を畳み掛けるアニーシャに、カイルはすっと表情を硬くした。


「気持ちを偽ってなど……その必要がありません」