久遠の絆

「カイル、お前ほっとした顔をしているな」


「え?」


「アニーシャが拒んで、実のところお前が一番良かったと思ってるんじゃないのか?」


「どういう、ことです?」


「お前の心にいる人のことだよ」


「!」


「隠したって無駄だぜ。私は何でも知っている」


「……このような時にそのような冗談を仰られても、笑えませんよ」


「ふん、まだシラを切るつもりか」


「シラなど……切る必要もありません。私の心には誰もいませんよ」


「ほう、まだ言うか。いいだろう。ずっと婚約者として過ごしてきて、正式に婚約の儀を執り行った女に操を立てるならそれもいい。
だがな、カイル。アニーシャはそういうお前の心の奥を敏感に感じ取ったからこそ、挙式を拒否しているんじゃないか?お前が今までになく強引に結婚を急ぐのも、何か焦っていることがあるからじゃないのか?」


カイルは呆然とした顔で元皇帝、ジュラークⅠ世を見返している。


何を言われているのか良く分からないと思っているようだ。


「いいか、カイル。お前が帝国を守りたいと、そういう気持ちから即位を決意してくれたということには感謝している。
だがな、お前自身の幸せを捨ててまで、そんな悲愴な決意の末に皇帝になるというなら、私は即位などしてくれなくていいと思うんだ。そこまでして帝国を存続させて何になる?何にでも寿命はある。国にだってな。帝国が今その寿命を迎えたというのなら、お前が即位する必要はないわけだ。いずれにせよ、国は滅びるのだから」


カイルは青ざめた顔をしながら、ジュラークⅠ世の話を聞いていた。


「あなたは、国を存続させたいと思っていらっしゃるのではないのですか?」