◇◇◇
(寒い……寒い……)
立ち尽くしている間に青空に雪雲が広がり、すぐに吹雪となった。
何も風避けとなる物のない場所なだけに、蘭は動き出さざるを得なくなった。
防寒着も役に立たない。
(なんでわたしばかり、こんな目に合わなくちゃいけないの?)
何度そう思ったか知れない。
柔らかな雪を掻き分けながら、なんとか林の入り口となる木まで辿り着いた。
木を盾にすると、吹雪も幾分かマシになった。
木の幹にもたれ、一息つく。
(でも、だからと言って状況が変わったわけじゃない……)
あの兵士たちは、食べ物も水も置いて行ってはくれなかった。
(このまま死ねるなら、その方がよっぽど楽だよ……)
また思考が死へと向く。
この世界に来て、こんなに『死』を意識したことはなかった。
「わたしには、この世界を救うことなんて出来ないんだよ……」
今の蘭は、薄氷が壊れるように、ほんの少しの刺激で簡単に砕け散る危うい状態だった。
すべてがどうでもよかった。
(このままわたしも、この木々のように雪に埋もれてしまいたい……)
横殴りに降る雪を眺めながら、そんなことを妙に穏やかな気持ちで思っていた。
そっと瞼を閉じる。
そして木と同化した自分を想像した。
(ほら、何も怖くない。ここには嫌なことは何一つないんだから……。わたしはこの木と一緒になるだけ。死ぬんじゃない。少し形が変わるだけ。人として生きるより、ずっとずっといいよ……)
そうやって死を受け入れようとする蘭の指で、瑠璃の石がどす黒く曇り始めていた。
(寒い……寒い……)
立ち尽くしている間に青空に雪雲が広がり、すぐに吹雪となった。
何も風避けとなる物のない場所なだけに、蘭は動き出さざるを得なくなった。
防寒着も役に立たない。
(なんでわたしばかり、こんな目に合わなくちゃいけないの?)
何度そう思ったか知れない。
柔らかな雪を掻き分けながら、なんとか林の入り口となる木まで辿り着いた。
木を盾にすると、吹雪も幾分かマシになった。
木の幹にもたれ、一息つく。
(でも、だからと言って状況が変わったわけじゃない……)
あの兵士たちは、食べ物も水も置いて行ってはくれなかった。
(このまま死ねるなら、その方がよっぽど楽だよ……)
また思考が死へと向く。
この世界に来て、こんなに『死』を意識したことはなかった。
「わたしには、この世界を救うことなんて出来ないんだよ……」
今の蘭は、薄氷が壊れるように、ほんの少しの刺激で簡単に砕け散る危うい状態だった。
すべてがどうでもよかった。
(このままわたしも、この木々のように雪に埋もれてしまいたい……)
横殴りに降る雪を眺めながら、そんなことを妙に穏やかな気持ちで思っていた。
そっと瞼を閉じる。
そして木と同化した自分を想像した。
(ほら、何も怖くない。ここには嫌なことは何一つないんだから……。わたしはこの木と一緒になるだけ。死ぬんじゃない。少し形が変わるだけ。人として生きるより、ずっとずっといいよ……)
そうやって死を受け入れようとする蘭の指で、瑠璃の石がどす黒く曇り始めていた。


