久遠の絆

◇◇◇





「顔色が悪いな」


さして心配している風でもなく、隻眼の男が言った。


その部屋にふたりきり。


蘭は完全に蛇に睨まれた蛙状態で、震えながら立ち尽くしていた。


対するヘラルドは。


彼自身の執務室の豪華な皮張りの椅子に腰掛け、さながら王の謁見のように鷹揚な態度だった。


「お前に聞きたいことは山ほどあるが……」


もはや『お前』呼ばわりであることに、蘭は気付いているかいないのか。


それ程に、蘭は緊張仕切っている。


やはりヘラルドは、彼女にとって忌むべき存在なのだ。


「随分敷地内を走り回ったようだが、何か収穫はあったのかね」


(なんで知ってるの?!)


瞠目する蘭を、ヘラルドは平然と見返している。


蘭はまるで尋問を受けているような気分になってきた。


立場は完全に相手の方が上で、彼の意思ひとつで蘭の処遇が決まる。


(きっとそうなんだ)


萎縮する気持ちをなんとか奮い立たせながら、やっとの思いでヘラルドを見返している。


「シドさまをたぶらかしただけでは飽き足らず、諜報の真似事でもしようというのか?帝国の元帥に頼まれて?」


本当はそんなこと思っていないだろうに、ヘラルドは蘭をただ追い詰めるためだけに言葉を紡ぐ。


「そんなこと……ない……」


蚊の鳴くような声で蘭は反論した。


それもまたヘラルドには恰好の攻撃材料となり、彼はフッと鼻で笑うと、

「聞こえんな」

と一言で切り捨てた。