久遠の絆

この時初めて蘭は違和感を感じた。


何故ヘラルドはシドの人格が変わることを心配するでもなく、疑問に思うでもなく、平然と笑っていられるのか。


(何かおかしい)


「おい、どこ向いてんだよ」


シドは苛立ったように声を荒げた。


視線を戻した蘭は、そんなシドを静かに見返した。


「なんだよ」


「ううん、なんでもない。ただね、わたしはシドの傍にいるって決めたから、どんなことがあってもそうするよ?」


「おま……何言ってんだ?」


蘭の言った意味を考えようとしたのか、シドは眉根を寄せた。


しかし次の瞬間頭を抱えて床に片膝を付いたのだ。


「ど、どうしたの?!」


「すっげ頭いてえ……」


「いけませんね、総帥。いつまでもこのような小娘を相手になさっているからですよ」


いつの間に側に来たのか、ヘラルドはシドの肩を手を添えて立ち上がらせた。


「本館で休みましょう」


「……ああ」


シドはヘラルドに体を預けるようにして歩き始めた。


「待って!!」


行かせちゃいけない。


何を考えているのか分からないヘラルドに、このままシドを任せるのは不安だった。


しかし。


「しつこいぞ、小娘」


「なっ……」


ヘラルドの鋭い眼光を浴びて、蘭は微動だに出来なくなってしまった。


恐怖で足がすくんていた。


彼女はヘラルドの怖さをよく知っているのだから。


「私を欺いたこと、後悔させてやる」


そう言って、またあの勝ち誇った笑みを浮かべた。


常になく歪む口元。


蘭の背中に悪寒が走る。


それと共に感じる違和感はよりいっそう強くなっていた。









シドは頭を抱えたまま、振り向くことなくヘラルドと行ってしまった。


装甲車の賑やかな音が遠ざかっていく。


シドと蘭のふたりきりの隠れ家生活は、こうしてあっけなく終わってしまったのだった。