久遠の絆

シドはもう蘭に興味を無くしてしまったかのように手を離すと、不機嫌さを隠そうともせず立ち上がり、

「ヘラルドの奴。俺をガキとふたりきりにさせてどういうつもりだ。さっさと迎えに来いっての」

などとぶつぶつ言っている。


明らかな態度の豹変に蘭は呆気に取られていた。


(も、もしかして……みっつ目の人格とか?)


だとするなら、彼には似つかわしくない、粗野で乱暴な人格だった。


(嫌だよ~。こんなシド)


男の料理を振る舞ってくれ、常に蘭のことを気遣ってくれたシド。


その本当のシドは今はいない。


そんな風に思うと、あんなに恥ずかしかったお姫様だっこまでが懐かしくなってくる。


「おい、お前」


「は、はい」


それまで部屋をうろうろしていたシドが突然蘭に目を向けた。


「シドさまに茶くらい煎れて差し上げようって気にはならんのか?」


そう言うと、シドはどっかとソファに腰掛け、横柄な仕草で足を組んだ。


「お茶……いるの?」


「んなことも分かんねえのかよ、ガキ」


(は、腹立つ~)


本当のシドを知らなければ、一発殴っていたかもしれない。


「はいはい、お茶ね。煎れりゃいいんでしょ、煎れりゃ」


「俺が飲むんだからな。湯の温度にも茶葉の量にも細心の注意を払えよ」


台所に向かう蘭の背中に、そんな言葉が浴びせられた。


いい加減むかついていた蘭は、急須やカップをドカドカカウンターに置きながら、


(分かった!第3の人格って“俺様”なんだわっ)

と悟っていた。


温度や茶葉の量などと言われても、正式な作法を知ってるわけでもなし、蘭は適当に煎れることにした。


基本はシドなのだから、俺様な人格だからと言って怖れることは何もないのだ。


「色が付いてたら飲めるよね」