久遠の絆

すっと頭の上をシドの腕が伸びて、すぐに曇ってしまう窓を拭いた。


蘭は彼のそんな何気ない仕草にも、いちいちドキッとしてしまう。


彼が呼吸をする度にさえ意識は彼へと集中するくらいだから、かなり神経過敏になっていた。


「ば、ばばさま、心配してるかな?」


自分だけが変に意識している。


そんな気持ちを振り払うように蘭は早口でそう言った。


「ばばさま?」


後ろから尋ねる声に、

「う、うん。ナイルターシャさまだよ」

とさらに早口になって答えた。


「ああ、ナイルターシャ……」


気の抜けたような声を出したシドに、蘭はまくし立てた。


「だって何もなければ毎日ばばさまのとこに行ってたんだもん。体調良くなったって言っても、やっぱりひとりだと寂しいだろうし。心配もするだろうし。何かあったんじゃないかと思い詰めたらまた体壊しちゃうかもしれないし。だからちょっと気になって」


まくし立てながら蘭は振り向いた。


シドが見つめていた。


ふっと蘭の頬に手が当てられ、彼女は少しびくりと肩を震わせた。


「シド……?」


長身の彼を見上げれば、漆黒の瞳が甘く揺れている。


そしてシドの顔が近付いてきて……。


「あっ!」


蘭の突然の大声にシドの動きが止まる。


少しでも動けば触れ合ってしまいそうな近さで、シドは固まっていた。


「わたし、喉渇いたからお茶飲もうって思ってたんだよね!」


やたらテンション高く言いながら、シドを回り込むようにして体を避けた。


「シドは?お茶いる?」


後ずさりながら聞くと、随分してから「俺はいい」とこちらはかなり低い声だった。


「そ、そう。じゃ、ちょっと待っててね」


足早に台所へと入る蘭をよそに、その後シドが深い溜め息をついたのは言うまでもない。