久遠の絆

下りるにつれ、先程シドが伴ってきたものとはまた違う匂いがしてきた。


(さっきのはトーストで、これは?)


料理上手なシドの作ったものだ。


自然期待が膨らみ、蘭は途端に空腹を感じてしまった。


(わたし……ちゃんと生きてるんだな……)


虚無に沈んでしまおうとしていたのが嘘みたいに、今は楽しい。


(全部シドのおかげだ)


彼があの恐ろしい虚無から救い出してくれたのだ。


何もかも捨ててしまおうとしていた自分を。


そう思った時、ぞくりと悪寒がした。


背後に気配を感じて振り向く。


けれどそこには何もいない。


いるはずはないのだ。


(気のせい、気のせい)


無理矢理気を取り直して階段を下り切ると、心持足早に居間へと入った。


ダイニングの食卓にはもう何品かの料理が並べられていた。


トーストに数種類のジャム、あつあつのポトフに、焼き立てのリンゴパイ。


「おいしそ~」


思わず声に出して席に着く。


昨夜よりはだいぶ食欲も持ち直したようだった。


シドも湯気の立つカップをふたつ手にしてやって来た。


「食べられそうか?」


カップにはココア。


「うん、なんだか元気が出てきた」


「そうか、そうか。よし、食え」


おそらくは蘭にしか見せないのであろう笑顔で、シドは蘭がトーストにかぶりつくのを見守っていた。