久遠の絆

トントンと扉がノックされ、そこからシドが顔だけ覗かせた。


「起きてた?」


ほのかにトーストの香りをひきつれて入って来たシドに、蘭はほっとした。


以前は漆黒の総帥と怖れた人を、今では安心感すら覚えるなんて。


蘭は自身の心のうつろいを内心可笑しく思うのだった。


「よく眠れたか?」


蘭は頷きながら掛け布団を顔の中程まで引き上げた。


ちょうど目から上だけが見えている。


そんな恰好になって、おずおずと気になっていたことを尋ねた。


「あの、シド?」


「ん?」


「あの……わたし、ソファで眠ってしまったことまでは思い出せるんだけど、それからがよく分からなくて……」


「ああ、やっぱりさすがにあのまま寝かせとく訳にはいかないからさ。俺が運んだ」


「あの……それはぁ、やっぱり、つまりぃ……」




お姫様だっこ?




そうそうと事も無げに頷くシドに、蘭は顔を真っ赤にした。


一度ならず三度まで。


この美形にお姫様だっこしてもらうなんて!


(めっちゃ恥ずかしい……)


「どうした?」


顔を真っ赤にして布団を頭の上まで引き被ってしまった蘭。


その原因を作ったのが自分だと、シドは気付くことなく呑気に言った。


「ううん、なんでもない」


布団の下からくぐもった声が聞こえた。


「そうか?ならそろそろ起きて、朝飯にするか」


「……うん」